自分の口座に振り込まれたお金を転送するだけで、お金がもらえる仕事。それがマネーミュールと呼ばれている不正送金の運び屋です。

●マネーミュール=不正な資金の「運び屋」

「マネーミュールの『ミュール』は、英語で『ラバ』(ロバと馬をかけあわせた動物)という意味です。ラバは荷物運搬に使われることから、マネーミュールは『お金を運ぶラバ』、つまり不正な資金の『運び屋』のことを意味します。

犯罪組織は、インターネットバンキングの不正アクセスなどで得た犯罪収益を、マネーロンダリング(資金洗浄)しようとします。その際、資金移動業者を利用して海外に送金するようですが、マネーミュールはその中継役となっているのです」

今回の事件では、海外送金をした男性が「犯罪収益移転防止法」違反の疑いで逮捕された。マネーミュールはこの法律で取り締まられているのだろうか。

「そのとおりです。『犯罪収益移転防止法』は、マネーロンダリングを取り締まる法律といえます。

この法律では、資金移動業者に『疑わしい取引』を届け出る義務を定めることのほか、たとえば、他人名義の口座を使って金銭を受領しようとしたり、相手方がこのような目的を持っていることをわかっていながら、通帳やキャッシュカードを受け渡す行為も犯罪とされています。

今回のケースのようにマネーミュールは、第三者に口座を利用させているといえるので、これも罪に問われます」

●「こんな話は怪しい」と思わないほうが不自然

犯罪で得られた金とは知らなかった、では済まされない?

「多額の金が自分の口座に振り込まれて、海外に送金する手伝いをするだけで、10%程度の報酬が得られる――。落ち着いて常識的に考えると、『こんな話は怪しい』と思わないほうが不自然でしょう。

法律上は、実情を知らなくても、他人が自分名義の口座を利用することの認識があれば処罰されます。知らなかったでは、済まされません。

また、犯罪収益を移転する目的で利用された口座は凍結されます。いったん自分名義の口座が凍結されると、その後は銀行口座が開設できなくなるおそれもあります」

桑原弁護士はこのように説明したうえで、次のように注意を呼びかけていた。

「最近では、携帯電話を契約し本体を送って審査に合格すると『50万円が振り込まれる』といった手口もあります。送った携帯電話は振り込め詐欺などに使われてしまいます。犯罪組織や悪徳業者は、いろいろな手口を使って、みなさんの情報を悪用しようとしてきますので、注意が必要です」